「僕らはさ」
校庭で、理樹がつぶやく。
「どうした?」
「僕らは、いつまで一緒なのかな?」

それは、何気ないひとこと。
でも、それが、引き金になった。

「そんなもの、いつまでもに決まってるだろう」
「え?」

思わず、理樹は聞き返す。
鈴は、胸を張って答えた。

「あのバカ兄貴なら大丈夫だ。真人は今流行のニートだ。謙吾も……まぁ大丈夫だ。バカだけどな」
「あ、あはは……」
取り敢えず、学生はニートではないと言おうとしたが、やっぱりやめた。
真人は、遠からず自宅を警備することになってしまうだろう。

「……はっくし」
「どうした? まさか、風邪か!?」
「いや、オレに限ってそれだけはありえねぇ。何か鼻に入ったんだろ。じゃなきゃ、誰かが噂してるとか」
「なるほどな。お前が風邪を引いた日には、世界が終るからな」
「あぁん? なんだテメェ、『真人は風邪を引くのが絶対にありえないほどのバカです』とでも言いたげだなぁ!?」
「おぉ、俺の意思を汲んでくれるとは、中々お前もやるじゃないか」
「へへっ、まあな」

「──それで結局、どうなるんだろうね、僕たち。そろそろ就職か、それとも進学か、考えないといけないし」
「あたしは……もう決めた」
「そう、もう決めたんだ、って、ええっ」
何となく流れで答えてしまったが、鈴の発言は、どう考えても今までの鈴ではなかった。
「どうしたの急に、将来のこととか考え出しちゃって? 何か悪いものでも──」
「バカ」

鈴は理樹をちょっと小突いて、その小さな手を理樹の手のひらに重ねた。
「あたしは、お前のところに就職するんだ」
「え、それって……」
「ええい、うるさい! だまってあたしを就職させろ!!」

──

「……うんうん、初いねぇ初いねぇ」
「って姉御、私らみんなと同い年っスよ」
「高みの見物ほど楽しいものはない、違うかな?」
「いやまぁ、そうなんですけど」

理樹は頭が混乱していて気が付かなかったが、今回も唯湖の仕業であった。
鈴は、照れ隠しに理樹を殴るのに必死で、まったく覗き見の存在に気付いていないようだった。

(了)


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