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※当SSは演出の都合上、特定一文字を伏せてお送りしております。

「ねぇねぇ、チン○姉チン○姉」
「なんだ?」
「今、このゲームやってるんっスけど、全然分かんないっスよぉ」
「ふむ。どれ、姉が解決してやろう」

今、ウェンディが見ているのは、脱出ゲームと呼ばれる、インターネットで気軽に出来るゲームの一つだった。
主人公は部屋に閉じ込められ、そこから出るだけなのだが、これがまた相当に難しい。
様々な場所を虱潰しに○リッ○してアイテムを手に入れ、それを使ってまた別なアイテムを手に入れる。
いくつかのカードは揃っていたが、そこから先何をどう使えばいいのか分からず、困っていたのだ。
「どれ、最初からやってみせろ」
「了解っス」
題材は冬。○リスマスと少し時期外れなのを選んだのが、またウェンディらしい。
チン○は一つ一つ、画面を精査していく。隻眼が煌き、的確な○リッ○でアイテムを手に入れた。
「お前はこれを手に入れたか?」
「いや、取ってなかったっス。○リッ○が甘かっただけっスね、それなら仕方ないっス」
あははと笑うウェンディに、チン○は溜め息を吐く。もしかして、人任せにする気だったのか?
だが、始まるとこれがイライラするほど難しいのに、全然手が離せなくなる。
いつの間にか、二人は画面に食い入っていた。
「次だ」
「はいっス。私が分からなくなったのはここからで……この矢印が……」
ウェンディが指し示したのは一枚の絵。横棒が二本走っていて、その両側に絵がついている。
右側は太陽と苺、そしてバナナだ。左側のアンコウには奇妙な斑点がある。
「何かのヒントになってるはずなんっスけど」
「ふむ。ちょっと紙とペンを貸してくれ」
「はいっス」
サラサラと紙に色々と書き付けていって、チン○はあることに気がついた。
そのまま読むか、ミッド語にすれば、それぞれ数字が現れるのだ。アンコウに斑点をつけると、アンゴウ、暗号……
「3(Sun)に15、あと877だな」
絵の真下に、鍵の掛かった箱がある。丁度6桁。
解読した数字を打ち込んでいくと、見事鍵が開いた。
「やったっスー! これで○リア……じゃなかったっス」
中に入っていたのは、紙切れ一枚。しかも今度は不思議な模様が描いてあって、チン○もウェンディもさっぱりだった。
覚悟を決め、椅子に深く座りこむチン○。
画面と格闘を始めてから、そろそろ一時間が経過しようとしていた。

「帰ったぞー」
数時間後。ゲンヤが帰って来て、二人はようやく顔を上げた。
チン○は頭を下げ、ウェンディは抱きつく。まったくいつもの光景だ。
「おかえりなさい、父上」
「おかえりなさいっスよぉ、パパりん!」
「……いつも言ってるけどな、ウェンディ、その『パパりん』は止めちゃくれんのか?」
困惑していながらも、目を逸らして顔を赤らめているゲンヤ。
あながち満更でもないのだろうと、いつもチン○は考えていた。
「二人だけか?」
「はいっス。ノーヴェはヴィヴィオとお泊り、ディエチはお仕事っス。今日は遅くなるって言ってたっス」
「そうか。……んで、飯はできてないのか?」

「「あっ」」

時計を見る。たっぷりと日は暮れていた。というか結構遅い時間だった。
今更のように○゙ゥ○゙ゥ腹が鳴って、二人は俯く。
「只今、作ります!」
「ご、ごめんなさいっスー!!」
風を切って台所に駆け込む二人。敬愛する父のために、一刻も早く夕飯を用意しなければならない。
彼は一日の勤めを果たして、疲れきっているのだ。
腕をまくった二人は、冷蔵庫を開けて材料を取り出し、シン○から包丁やまた板を引っ張り出した。
「いくっスよ、チン○姉!」
「了解だ」
こうして、ナカジマ家の夜は更けていった。
(了)



***



「ところで」
「はいっス」
「何で私の名前が伏せられているんだ。凄く卑猥じゃないか」
「『そんなことを考える方がずっと卑猥だ』って、ド○ターがいつか言ってたっス」
「むぅ、そうなのか……私は卑猥なのか……」
(完)

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