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来ヶ谷さん?

「おお、少年か。今日はまた改まった様子でどうしたんだね。
このおっぱいを堪能したいのならクドリャフカ君を代りに差し出したまえ」

うん。恋って何なんだろう、って思って。
葉留佳さんから、来ヶ谷さんなら知ってるかもねって言われたから。

「スルーされるとお姉さんはちょっと悲しいぞ?
しかし、恋……か。ふむ、それはキミ、熱く萌え上がるものだよ」

なんか、漢字が違う口調に聞こえるけど?

「そうか? だがそれは少々の違いというものさ。
萌えることに間違いはないし、燃えることもまた然り、さ」

そんなものなのかな?
でも、その「熱くなる」っていうのが良く分からないんだ。

「……ほぅ、それは中々重症だな。自分でも気付かないとは。
よしよし、お姉さんが手取り足取り棒取り教えてあげよう」

最後の一つは一つ間違うと凄いことになるから気をつけてね?

「はっはっは。それは承知済みさ。さて、何から話してみようかな?
理樹君は何を知りたい?」

そうだね……恋をするとどうなるのか、知りたいな。
葉留佳さんも小毬さんも、ちょっと抽象的で。女の子らしいっていえば、そうなんだけど。

「まあ、あの娘たちは乙女だからな。ってことは私は乙女ではないのか?
理樹君、確か君は葉留佳君から話を聞いたと言っていたな。
あとでゆっくりお話しようじゃないか、え?」

く、来ヶ谷さん、落ち着いて……

「おっとすまんすまん。恋をするとどうなるか、だったな。
うん、これははっきり分かる。
奪いたくなるのさ。衝動的に、彼女の全てを」

奪いたくなる?
いわゆる逃避行みたいな?

「お互いが好きであれば、そうなるな。だが、そうであるが故に、
『一方的な恋』、つまり片想いほど苦しいものはないのさ」

うーん、僕は誰かを奪いたくなったことは……ないかなあ。
いつまでも一緒にいたいって思う人ならいっぱいいるけど。

「何、すぐに分かる。相手を独占しようと思う感情が『好き』、恋ということだな。
私が考えるに、キミは気付いていないだけさ。
『一緒にいたい』と『奪いたい』の違いが、分からないほどに小さすぎてね」

随分詳しいんだね、来ヶ谷さんは。
実は、誰かに恋してたり?

「理樹君、キミも粋なことを言うね。だがちょっと違う。
何せ『姉御』と呼ばれるくらいだからな、相談はあちこちで受けているから──」

来ヶ谷さん、顔ちょっと赤いよ?

「う、うるさい。私だって恋する乙女だった時期があるんだ。
……だが、リアルタイムでという意味ならば、
二木女史が知っているかもな。彼女を当ってみるといい」

二木さんが?
うん、分かった。ありがとう、来ヶ谷さん。
来ヶ谷さんの話、聞いてて分かりやすかったよ。

「うむ。困ったことがあったらいつでも聞きに来てくれるといい。
美味しいお茶を用意して待っているよ」

***

「まったく、手を焼かせるものだよ、理樹君は。
しかし、そこがまた可愛いのだがな。
うむ、佳奈多君の焦る顔でも観に行くか」

(続)

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