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「ヴィヴィオ、起きてください、朝ですよ」
「うにゅ〜、あと5分だけ〜……」
「まったくもう……」

朝、ヴィヴィオは布団の中でうねうねしながら、揺り起こしてくる手から逃れていた。
太陽が出ているのも分かる。チュンチュンスズメが鳴いてるのも分かる。
それでも、どうしても起きたくないのだ。
「5分で起きるー」
なんだか3回目か4回目な気がする。
頭がうまく働かない。身体を起こそうと腕を動かしても、どうにもこうにも面倒臭い。
そこへ、とどめの一撃が加わる。
「ヴィヴィオ、起きてください、そうしないと朝ごはんはピーマン尽くしですよ」
「えぇーっ、やだーっ!!」
ヴィヴィオは電光石火、ベッドから飛び起きた。
そのまま立ち眩みを起こすんじゃないかというくらいびしっと背筋をまっすぐに伸ばすと、隣で驚いていた少女に頭を下げた。
彼女は、世界で一番愛しい恋人にして、このねぼすけを一番辛抱強く起こしてくれる人。
「ありがとう、アインハルト」

少し前、落ち込んでいたアインハルトを励ましていたりしていたことがあった。
その流れで互いの名前を呼び捨てにするようになり、それから程なくして付き合い始め、現在に至る。
晴れて恋人になってからというもの、毎日起こしに来てくれるのは凄くありがたい……のだが。
「ふぁぁ……私も眠くなってきました」
これである。下手するとこのまま布団に二人してダイブしそうで怖い。
もっとも、ヴィヴィオの家まではるばる来てくれているのだから、文句どころか感謝ばかり。
毎朝早く来て辛抱強く起こしてくれて、しかもお弁当まで作ってくれる。
「ダメだよぉ、今度はアインハルトが寝ちゃったら!」
でも、アインハルトを起こすのは、とっても簡単なのだ。
肩を揺すってもダメな時は、こうするのが一番。
「ちゅ」
「ひゃぁっ!」
その頬にキスしたら、アインハルトはもんどり打ってひっくり返り、壁に激突した。
唇にしたらどうなっていたのだろうかと思うと、不覚にも顔がにやけてしまった。
倒れた勢いでスカートがめくれ、下着が目の前に晒されている。
何だか身体が熱くなってきた。ゴクリと生唾を飲み込んで、目を回しているアインハルトを見つめる。
ベッドじゃなくてアインハルトにダイブしたくなったが、そんなことをしていたら遅刻は確定である。
いろんな意味で突撃したくなったが、朝からそれは止めておいた。
「ほら、アインハルト。手、出して」
「え……あ、すみません」
少女の頭上を飛んでいたひよこがどこかへ消えたらしい。
アインハルトの手を取って立ち上がるったが、その拍子にバランスを崩した。
「あっ!」
よろめいて身体を預けられる。これくらいなら大したことないのだが、その後が問題だった。
ノックとほぼ同時に、ドアが開けられる。母親のなのはだった。
「ヴィヴィオー、ご飯だよ……ご、ごゆっくり〜」
無表情でドアを閉められる。直後、ばたばたとスリッパの音が家中に響く。
何をしようとしているのかは明白だった。
「あなた! ヴィヴィオがアインハルトに!」
「すずかなんてアリサにいつもしてたのに、今更騒ぐことでもないでしょ」
「あぁ、そっか」

──あれ、解決しちゃった!?

改めて現れたなのはは冷静をそれなりに装っていた。
「ご飯だからその前にジョギング行ってらっしゃい。アインハルトはお茶でも飲んで待っててね」
何か釈然としない。でも、まぁいいか?
洗濯されたジャージを受け取り、急いで着替える。
玄関で渡された水をくぴくぴ飲み干して、ドアをくぐった。
「いってきまーす!」
向こうで手を振っている両親、そして恋人に手を振り返して、ヴィヴィオは朝の日課を走りだした。
今日は予定が遅れ気味だから、ちょっとペースを上げないと。
「アインハルト、可愛かったな」
クスクス笑いながら、犬の散歩をしていたご近所さんに挨拶しつつ、足を速めるヴィヴィオであった。

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