ブログ
なのはの一日は、携帯からのメッセージで始まる。
「朝だよ。起きて、なのは。朝だよ!」
「ひゃあぁっ!」
録音した音声は、ユーノ・スクライアのもの。
飛び起きたなのはは慌てて携帯を止めると、隣でまだ寝ているユーノにピタリと寄り添う。
「ゆーのくーん、あさですよー」
ゆさゆさと揺らすが、ユーノは目を覚まさない。
それはもう、恋人の声で叩き起されるなのはではあるが、自分の声ではやはり目を覚まさないものらしい。
「それじゃ、おはようのキスをしちゃおっかな」
なのはは、そっと唇を寄せた──だけではない。
そのまま舌を捻じ込んで、無防備なユーノの口腔をしゃぶる。
くちゅ、ちゅく、とユーノを味わっているうちに、いつしか本気のキスになっていった。
「大好き、ユーノ君、大好き」
折りしも、今日は休日。いつまでもこうやって舌を絡ませていたいくらいだった。

そうして、美由希が部屋に入ってくるのと、ユーノが目を覚ますのは同時だった。
「なのはー、朝ごはん……だ……よ?」

ユーノは、なのはに何をされて、美由希が部屋に入ってきて……
寝ぼけた頭が現実を認識した瞬間、バタリとドアを閉める音が聞こえた。
「ごゆっくり」
その一言があまりにも痛かった。
「ユーノ君ユーノ君ユーノ君ユーノ君」
情熱的なキスですっかり目覚めてしまった。
息継ぎに口を離した瞬間に、ユーノはボソリと言った。
「あ……うん、僕もう起きたから」
「ダメ。わたし、もう我慢できなくなっちゃった……」
全身をさわさわと撫でてくるなのは。
朝っぱらも朝っぱらだが、日本にはこんな格言があるらしい。
『据え膳食わぬは男の恥』 by八神はやて
ユーノは流れに身を任せることにした。
パジャマのままのなのはを、思い切り抱きしめる。
うなじからは、甘い香りが漂ってきた。

***

その後何が起きたのか、誰も知らないし、誰も知りたがらない。
「どうせナニしてたんでしょ」
妹に先を越された姉の瞳には、一粒の涙がキラリと光っていた。

(完)

小説ページへ

inserted by FC2 system