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「う〜〜トイレトイレ」

今、トイレを求めて全力疾走しているあたしは、時空管理局に務めるごく一般的な女の子。
強いて違うところをあげるとすれば、女に興味があるってとこかナ──
名前はスバル・ナカジマ。
そんなわけで、寄り道をして聖王教会のトイレにやって来たのだ。

「ん?」
ふと見ると、ベンチに一人の幼い女の子が座っていた。
ウホッ! いい陛下…

 いつもの、中華風の服を着ている女の子。
 休みができる度に会いに来てるけど、今日は一段と可愛い……じゃなくて!
 昨日雪が降ったばっかりで、全然気温も上がらないし、寒くないのかなぁ。
 でも、銀景色の中でゆっくりとお茶を飲んでる姿も凄くサマになってる。
 ちょっぴり変な女の子だけど、こうして遠目に見てると、流石は陛下って感じだね。

そう思っていると、突然その女の子はあたしの見ている目の前で紅茶のカップを掲げたのだ…!
「やらないか」

 えーっと、うん、何だろう、この子また変な言葉を覚えちゃったよぉ!
 でも、お茶のカップってことは、お茶会をするってことだよね。
 ちょっとトイレにいくついでにお話できればいいなぁって思ってたけど、あったかい紅茶でポカポカになろう!
 そういえば、セインとも最近会ってないなぁ。一緒にお話しようかな♪

そういえば、この教会は頻繁にお茶会があることで有名なところだった。
イイ陛下に弱いあたしは、誘われるままホイホイと教会の中について行っちゃったのだ♥

彼女──ちょっとヘンタイっぽい冥王陛下でイクスヴェリアと名乗った。
レズ・セックスもやりなれているらしく、トイレにはいるなりあたしは素肌にむかれてしまった。
「よかったんですか、ホイホイついてきて。私は防災士長だってかまわないで食べちゃう人間なんですよ?」
「こんなこと初めてだけど、いいんです…。あたし…イクスみたいな人好きですから」
「うれしいこと言ってくれるじゃないですか。それじゃあ、とことんよろこばせてあげますね」

 ってちょっと待ってー! 人に見られながらおトイレなんてできないよぅ!
 それ以前にこのSSは健全だから!! イクスと一緒に個室に入ってナニをするの!?
 そして寒い! 凄く寒いよ! イクスってば何でそんな格好のまま外でお茶飲んでたの?
 「あ、あの、イクス?」
 「はい、なんでしょう?」
 「お茶会をするんじゃなかったんですか? だってさっきカップを」
 「はい、そうです。でも、食欲の前に性欲を満たそうと」
 「訳分からないこと言ってるとまたデコピンですよ!!」
 「あぅ……スバルのデコピンは痛いのです。取り敢えず性欲は後回しにするのです」
 「何にも分かってないよこの子!?」
 取り敢えず個室からは出て行ってもらったけど、どこかにカメラがある気がして中々出てこない……
 ふぇーん、どうしてこうなっちゃったのー!?

***

言葉どおりに彼女はすばらしいテクニシャンだった。
あたしはというと、舌に与えられる絶味の波に身をふるわせてもだえていた。

 「イクスの淹れるお茶、美味しいですね」
 「ふふっ、聖王教会直伝の味ですよ」
 「でも、それだけじゃないです。あったかくて、優しい香りで……」
 「当たり前です。私がスバルのためにわざわざ淹れたんですよ」
 「ありがとうございます」
 ところでこのお茶、媚薬とか利尿剤とか入ってないよね?
 イクスも飲んでるから平気かな。いやいや、このカップにだけという可能性も……
 ううん、疑っちゃダメだよね。何か入ってるなら気づくはずだし。
 あぁ、身体があったまるなぁ。イクスの笑顔も見れたし、今日は幸せ♪
 ──ただ、このちょっと、っていうかかなりへんたいちっくなところだけ治ってくれれば……

しかし、その時予期せぬでき事が…
「うっ…!」

 「どうしたんですか、スバル?」
 あちゃー、このお茶上澄みの方は良かったけど、下の方はかなり渋い。
 スコーンで中和しようかなぁ、でもそれだとバクバク食べちゃいそうだし、イクスには『美味しいお茶だよ』って言いたいしなぁ。
 何より、せっかくのお茶だもん、こういうのも楽しまなきゃ!
 う、苦い! お水お水……あれ、ない? あぅ、伸ばしたこの手はどこへ向かえば……
 やばっ、茶渋が舌の上に……

「で、出そう…」
「ん? もうですか? 意外に早いんですね」

 ってやっぱり変なおクスリ入れてたのー!?
 イクス、恐ろしい子!
 まぁ、取り敢えずそのクスリの効果は出てないみたいだけど……そういうことじゃなくて。

「ち、ちがいます…実はさっきからミルクがほしかったんです。手を伸ばしたのもそのためで…」
「そうですか…」

 ん……ごっくん。何とか大事になる前に飲み終ったよぉ。次の一口は……ちょっと無謀だよね。
 何か凄くヘンなことをしてる気分。どう考えてもイクスのせいなんだからね!
 って、イクスの手がこっちに? また何かヘンなこと企んでるんじゃ……
 「もしかして、紅茶美味しくなかったですか?」
 「い、いえ、そんなことはないですよ!?」
 表情でバレちゃったかな……あぁっ、イクスがしゅんとしてる。何とかしないと!
 えっと、えっと、何を言えばいいかな? こうなったら正直に言った方がいいかな?
 「あのですね、イクス。お茶をちょっと出しすぎたみたいなんですよ。だからちょっと渋いっていうか」
 「え? あ、ホントです。これは苦いですね。ごめんなさいスバル。淹れ直してきましょうか?」
 「いえ、大丈夫ですよ?」
 どうしよう、イクスの沈んだ顔は見たくないし。
 ん、イクスがこっちを向いた。また何かよからぬことを企んでる予感……

「いいこと思いつきました。スバル、あなた私の中にミルクを入れて下さい」
「えぇ、イクスの中へですかぁ!?」

 何だろう、この誤解を誘う表現は……先にカップって言おうよ?
 もうどこからツッコミを入れたらいいのか分かんないよぉ!
 「私じゃありません。私のカップです。念のために言いますがティーカップです。まったくスバルはヘンタイさんですね」
 「いや、あのね」
 明らかに今までの流れからそういう想像をしちゃうよぉ!
 うぅ、あたしまでヘンな子になってきたんじゃ……イクスのせいなんだからね! 責任取ってよ!

「女は度胸! 何でもためしてみるものです。きっといい気持ちですよ。
 ほら、遠慮しないで入れて下さい」
彼女はそういうと、ポットにまとった保温シートを剥がして、滑らかな曲線美をあたしの前につきだした。

 一体何が気持ちいいんだろう? そして何でシート剥がしちゃうんだろう?
 確かに、お茶から出てくる湯気ってゆらゆらしてて、見てて楽しいものではあるけど……
 あ、まさか熱々のポットを触ってあたしが熱がる顔を見たいんじゃ……
 ってやっぱりそうだー! この子ニヤニヤしてるよぉー!
 「私の身体にミルクをかける妄想ですか? スバルの母乳なら飲んでもいいんですけどね」
 「出ないですよ! 赤ちゃんができないと母乳はでないんです!」
 明らかに不満顔だけど、仮に出せたってこんなところでおっぱい見せたくないよ……また何されるか分からないし。

自分のカップの中にお湯を入れさせるなんて、なんて人なんだろう…
しかし、彼女の柔らかく緩んだ笑顔を見ているうちに、そんなご奉仕じみたことをためしてみたい欲望が…
「それじゃ…やります…」

 ミルクの前に、やっぱりお湯を入れた方がいいと思う。そういうので中和するんだったら、最初から薄めた方が美味しいと思うし。
 トポトポと入っていくお湯と、次第に透明になっていく紅茶。これくらいでいいかな?

「は、入りました…」
「ええ、つぎはミルクです…」

 無意味にえっちぃ声だよぉ。身体がむずむずする〜!
 「ところでスバル」
 「はい」
 真顔になって聞いてくるイクス。こういう時、この子は二種類の質問しかしてこない。
 真面目すぎて答えきれないくらい難しい質問か、不真面目すぎて頭がいたくなるくらい『難しい』質問だ。
 そして、今回は後者だった。
 「どうしても母乳は出ないんですか?」
 「出ないって言ってるでしょう!? 出る訳ないじゃないですか!」
 一発で脱力しちゃった……出たとしてもイクスに飲ませるようなものじゃないのに。
 そこでイクスも脱力するのは何か納得がいかないけどね。
 でも、めげずに顔を上げる。今度は何を言い出すんだろう?
 「残念です。じゃあ、スバルのこくまろミルクで」
 「イクスはあたしに何を期待してるんですか!?」
 「えぇー」
 「あからさまに嫌そうな顔をされても出ないものは出ないです」
 ところで、こくまろミルクって何だろう?
 でも、凄く危険な匂いしかしないし、聞くのはやめとこうかな……

「それじゃ、出します…」
「いいですよ、カップの中にどんどんはいってくるのが分かります。しっかりポットの蓋をを閉めておかないといけませんね」

 そう言って、イクスはきゅっとポットの蓋を閉めた。ネジ式になってるなら早めに言ってよ!
 「って、やっぱりあたしの火傷するのを楽しみにしてたんですか!?」
 「いえ違います、正確には看病するのを楽しみにしてたんです」
 「どっちでもおんなじです!」
 頭が痛いのは気のせいじゃないよね?
 あぁ、でも病気とか怪我したらイクスに看病してもらうのは楽しみかも。えへへ……

「くぅっ、気持ちいぃ…!」
この初めての体験は、一人で飲んでいては知ることのできなかった高揚感をあたしにもたらした。
あまりに激しい奔流に、私の指は琥珀色の紅茶の中であっけなく火傷してしまった。

 「あっちゃぁ!」
 「スバル、ぼーっとしてどうしたんですか? 珍しくあわてんぼさんですね」
 責任の半分はあたしだけど、もう半分はイクスだよ!
 改めて、あたしのカップにも紅茶のおかわりとお湯、それからミルクを入れて、と。
 スコーンのおかわりも運ばれてきたり、楽しくおしゃべりしてたら、結構お腹が膨れちゃったな。

「このぶんだと、そうとうがまんしてたみたいですね。お腹の中がパンパンです」

 うぅ、食い意地張ってる訳じゃないもん! セインのお菓子が美味しいだけだもん!
 「ふふっ、怒った顔のスバルも可愛いですよ」
 まったく、可愛いこと言っちゃって……怒る気もなくなるよ。
 イクスはニコニコ笑ってた。やっぱりイクスはそういう顔が一番だよ。
 ふぅ、と一息つくと、イクスが聞いてくる。

「どうしたんですか?」
「あんまり気持ちよくて…こんなことしたの、初めてですから…」
「でしょうね、私も初めてですよ」

 ツッコミも沢山してるけど、こんなにのんびりと過ごすのは初めてかも。
 あったかいし、陽射しは柔らかいし。うん、こんな日があるって凄く幸せだなぁ。
 って、イクスが胸を張ってる。何をしたいんだろう?

「ところで私の胸を見て下さい。これをどう思います?」
「すごく…小さいです…」

 デコピンを喰らった。
 「いたっ」
 「失礼ですね、これでもちょっとは大きくなったんですよ!」
 「意味が分からないですよ! それにちょっとってどれくらいですか!?」
 手でカップを作ってるみたいだけど……んんー、どう見ても大きくなったように見えない。
 精々2、3センチくらい? 久しぶりならともかく、いつも会ってるから区別つかないんだけど?
 ──とか思ってると、イクスが自分の肩に手を掛けた。
 「え、スバル、私の胸を揉みたいんですか? もう、スバルにだけですよ。どうぞ確かめて下さい」
 「いそいそと服を脱ぎ出さないで下さいっ!」
 何だろう、この子といると最近すごく疲れる……

「小さいのはいいですから。このままじゃ収まりがつかないんですよ」
「あっ…」

 立ち上がったイクスは、そのままスコーンを一つ口にくわえると、あたしに差し出してきた。
 こ、これって、つまり食べなきゃいけないんだよね?
 おずおず……はむっ。
 甘くて美味しいけど、食べ進む内にイクスの口がぁっ……

「今度は私の番でしょう?」
「ああっ!!」
「いいですよ…よく焼けててとろけるみたいです…!」

 舌が入ってきた……ひゃぅ、甘くて熱い……!
 短いキスが終ると、今度は軽く口に紅茶を含んだ。あぁ、今度は口移しで紅茶飲まされちゃうんだ……
 もう一回キスされて、イクスの唾液と一緒に紅茶が流れこんでくる。
 ──と、またしてもむせかけた。

「で、出る…」
「なんですか? 今出したばかりなのにまた出すっていうんですか? 食欲旺盛なんですね」
「ちっ、違います…!!」

 やっぱり、ちょっぴり渋かった。これ以上薄めてもダメだし、こうなればやることは一つかな?
 えっと、上目遣いでお願いすれば大丈夫……だよね。イクスならきっと許してくれるよ!

「なんですってェ? 今度はお砂糖ォ? スバル、もしかして私をメイドさんと間違えませんか?」
「しーましェーン!!」
「しょうがないですねぇ。いいですよ、いいですよ。私が鍵をかけておきますからそのまま出しちゃって下さい。
シロップまみれでやりまくるのもいいかもしれませんね!」

 お茶会のことを指してるんだろうけど……どう考えてもアッチにしか繋がらないよぅ!
 お砂糖があるのにシロップって何ぃ!? うぇぇん、今日もいじめられちゃうよぉ……
 イクス、物凄く手つきがえっちなんだもん、夢中になっちゃうんだから止めてぇ!
 って、あ、またトイレに行きたく……こんなタイミングで変なクスリの効果が出てきたの!?
 止めて止めてイクス今そんなことされたらぁっ……!!

──と、こんな訳であたしの初めてのお茶会体験は『イク×スバ』な結果に終ったのでした…

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