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「どうしてクドのアフターはあってあたしのはないんだ?」
「それを言い出したらクーちゃん以外のは全員ないんだよ。あぅあぅ」
「だがしかし、理樹アフターがないのはどういうことなんだろうな、真のヒロインは理樹君だというのに」
「私とお姉ちゃんの姉妹丼を楽しみにしてたのに!」
「こらこら、直枝は絶対受けでしょ」
「ちょっと待って下さい、直枝×恭介と相場は決まっているのです」
「俺はもっと沢山野球がしたかったな……」
「オレももっと理樹と筋肉して遊びたかったぜ」
「──って僕がいない間に随分言いたい放題だね!!」

喧々諤々と下らない議論を交わしているところに、理樹は突っ込みを入れた。
こんな時、皆をまとめる恭介は不在である。
夕飯の配膳ジャンケンにボロ負けした理樹は、全員分の盆をピストン輸送していた。
「よきにはからえーさがってよいぞよー」
葉留佳が物凄く偉そうである。だが佳奈多に至ってはもっと偉そうだった。
やっぱり姉妹は似通うものである。
「こんな学食よりも理樹君を食べたいものだよ。そう、苦くてどろどろした白い粘液を……」
「来ヶ谷さんには後でバリウム持っていくね」
疲れた表情で皮肉を言うと、流石の唯湖も凹んでいた。
切り返しが上手くなったような気がするが、単に慣れただけとも言う。
「ところで、直枝さん」
「ん、どうしたの美魚さん?」
ようやく自分も席に着いて、いただきますと手を合わせたら、横にいた美魚が怪訝な顔をしていた。
何かあったのと聞き返すと、美魚はどこまでも深刻そうに聞いてきた。
「能美さんは昨今の法律的にアウトだと思うのですが、如何でしょうか?」
「わふ?」

理樹の一口目はクドリャフカの箸から「あーん」だった。

「甘いんだよ貴様らは! ブラックコーヒー飲んでるのにどうしてマ○クスコーヒー並みに甘いんだ!? 説明してくれ!!」
「いや姉御、笑ってるのか怒ってるのか判断できない言いがかりは止めましょうヨ」
理樹はクドリャフカから貰った卵焼きをもぐもぐしながら、自分の盆に載っている卵焼きに手を伸ばした。
そしてそれをそのまま、クドリャフカの小さな口に持っていく。
「はい、あーん」
「あーんです」
白くてぷるぷるの唇がはむりと卵焼きを咥えて、うっとりとした顔で噛んでいる。
唯湖が鼻血を吹きながら後ろにもんどりうって転んだ。
佳奈多は頭に血が上りすぎて葉留佳に介抱されていた。
「ああ、川の向こうで葉留佳が手を振っている……待っててね、もうすぐ行くから」
「勝手に殺さないで下さいお姉ちゃん!」
卵焼きを飲み込んだクドリャフカはにっこり理樹に笑いかけた。
それはまるで、全てを許す天使のようでもあった。
「おいしぃです! えへへ」
唯湖が痙攣し始めたが、取り敢えず放っておいた。
鈴は溜め息一つ、盛り上がる馬鹿×6には構わず、小毬と二人で食べ始めた。
「クーちゃんと理樹君はお似合いだと思うよ」
「まったく、そろそろ慣れろ、野次馬どもが」

「リキ!」
「なんだい?」
クドリャフカがもじもじし始めた。
理樹が聞き返すと、彼女はぼそりぼそりと上目遣いに聞いてきた。
「今度は、その……口移しで」
「ええっ!?」
「ふふふ、冗談ですよ」
クドリャフカの冗談は、でも、本当になってくれたらいいなと思わせてくれる何かがあった。
でも、それをやったら今度こそ周りの囃し立てが激しくなるだろう。
また今度にしようと耳打ちして、理樹はサラダをクドリャフカの口に運んだ。

理樹とクドリャフカが付き合って半年。
暖かくなってきた季節でも尚、リトルバスターズは相も変わらず大騒ぎなのだった。

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