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その日、クロノはありったけの資料収集をユーノに依頼すると、デスクから立ち上がった。
帰ってシャワーの一つでも浴びようと執務室を出る。
すると、オフィスの灯りがまだついていた。
「もう11時だぞ、一体誰が?」
中を覗いてみると、一人の少年がキーボードを叩いていた。
あれは確か、
「エリオか?」
ドンピシャ。振り返った顔は、義妹が後見人を務める、六課の頼れる騎士だ。
コーヒーを片手に後ろから見ていると、エリオは何かしらの気配を感じて振り向き、そして驚いた。
「え、あ……ハラオウン提督! どうしたんですか、こんな時間に」
立ち上がって敬礼をするエリオに、苦笑を向けながら制する。
「僕はもう帰るところさ、だから今は"ハラオウン提督"じゃなくて"クロノ"だ」

食堂はとっくに閉まっている。
夜勤職員に向けた24時間営業のカフェテリアへ、クロノはエリオを連れて行った。
クロノはコーヒーとサンドイッチを買い、エリオには紅茶とスパゲティを振舞った。
「なに、いつも義妹が無茶を言ってるお礼だ。高いものじゃないし気持ちよく食べてくれ」
そう言うと、エリオはお礼を言いつつしずしずと食べ始めた。
六課のことについて話していくうち、次第に二人は打ち解けてきた。
「フェイトさん、そんな頃があったんですね」
「ああ、今のあいつからじゃ想像できないと思うが……」

気付けば、食事が終ってもクロノはコーヒーのお代りを頼み、
もう日付が過ぎていた。
「おっと、そろそろ解散しないと明日の朝不味いことになりそうだな」
「そうですねぇ」
道すがら、クロノは六課にいて楽しいか、と聞いた。
「ええ、もちろん!」
満面の笑みで答えたエリオの表情には、どんな辛い時でも一緒にいてくれる仲間がいることを、
何よりも如実に物語っていた。

***

翌日。
キャロと共に訓練を受けるエリオは、お昼の時間になると共にフェイトに聞いた。
「フェイトさんって、子供の頃×××だったんですね?」
「え……?」
ピキン。
場が固まった。
さっきまで汗ばんでいて赤いくらいだったフェイトの顔が、みるみるうちに蒼くなっていく。
「誰から、そんなこと……」
「ハラオウン提督から、ですけど。あと、×××とか、×××っていうのも言ってましたよ」
何か、不味いことを言ってしまったのだろうか。
フェイトは蒼から白へと顔色を変え、口をぱくぱくさせて、すぐに踵を帰した。
「午後の訓練は中止! 二人とも、自主練にしてて!!」
取り残されたキャロは、ただひたすらに疑問符を集めていた。

翌々日から、フェイトは妙に肌の艶が良くなった。
一方のクロノはげっそりとやつれていたが、どっちに聞いても、
ニコニコされるばかりで要領を得なかった。
約一名が扇動した噂は、あっという間に管理局中を駆け巡ったのだった。





だが、その一人だけは全ての真実を知っていた。
毎度おなじみ、タヌキ耳である。彼女は激写していた。
自分では買えない値段の化粧品を、それこそダンボール箱単位で運ばせているクロノの存在を……

(了)

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