広告
「おっ、智代じゃないか」
「なんだ、まだ懲りないのか……」

たまたま、体育館の近くで出逢った、春原と智代。
「いやいや、今日は純粋にバスケットボールでもしてみないか? サマはなしだ。いいな?」
「それはこっちの台詞だ。よし、ちょうど暇をしていたところだ、相手になってやろう」
「やりぃ!!」
「……」
放課後であることも手伝ってか、ひょんなことから、スポーツで二人は対決することになった。

コトの発端は、いつもの馬鹿話から。
「ふっふっふ。奴が本当に女なら、バスケットボールで走ればぼよんぼよんと胸が揺れるはずだ!
シュートする前のジャンプ。ここが狙い時だと思うんだよ」
「お前は一体胸に何を求めてるんだ」
「違う、これはもう執念なんだよ! 智代が女であるのかそうでないのか、絶対に確かめなければならないんだ!!」
もうコイツはアホの塊だと思いつつ、面白がってみた朋也は、成り行きに任せて智代を体育館まで誘導したのだった。

ダン、ダン、ダン。
最初にボールを取ったのは、思いの外春原だった。
注意深く対峙する二人。
サッ……と右に動き、智代が反応したところで、俄かに方向転換、左をすり抜ける。
「なっ」
一瞬で春原はゴールまで駆け、思い切りダンクシュートを決め込んだ。
「ははっ、どうだ、僕の力は!」
「ほう、中々やるな。見直したぞ。だが、次はどうかな」
二度目の戦い。今度もボールは春原の手中にある。
距離にやや不安があるが、3ポイントシュートを決められそうな距離でもある。
春原の目が、キラリと光った。
「いっけええええええええええええっ!!」

全力で飛び上がり、春原がボールを投げた。
……が。
「甘い」
上昇軌道を描きかけていたボールを、智代の手はしっかりと捉えた。
「ははっ、私の勝ちだ……な……」
妙な違和感。タッチ、反則の気配。
智代は目線を下げた。胸元を見ると、そこにあるのは二本の手。
春原の手だ。当てられているのは、二つの丘。
指が軽く沈むほどの強さで、揉まれている。
春原の顔は、驚きと喜びに満ちていた。
「一遍、死んでみようか」
ボールをゴールに投げ込んだ後、智代は鋭い蹴りで今度は春原を空中に浮かべた。

「で、壁ハメコンボが1000まで繋がったのか。偉いぞ春原、ギネス記録更新だ」
「そんなきろくいらねーよ……」
翌日。
原型を留めないほどボコボコにされた哀れな男が、そこに一匹転がっていた。


小説ページへ

inserted by FC2 system