「はるちんあたーっく!」
今日も、葉留佳の悪戯は続く。
大量に撒かれたビー玉の廊下を如何に早く駆け抜けるか、というゲームが開催された。
恭介が真っ先に賛成し名乗りを上げたために、全員がスタンバイをしていた。

「ではでは、よぉ〜い、スタート!」
全員が一斉に駆ける。
「うぉぁっ!」
筋肉ベスト、頭脳はワースト。
真人が早速盛大に転んでビー玉の流れに乗り、どこかに連れ去られた。
「にゃっ!」
「わふー!」
鈴とクドが飛び出した。
やや遅れて、唯湖。
追従するは謙吾と恭介。

「うえ〜ん、待ってよ〜……」
小毬は走る走らない以前に置いていかれていた。

廊下も真ん中を過ぎ、勝負は佳境に入った。
鈴を引き離し一位を独走するクドは、まるでビー玉の方が勝手に避けて行くかのような、華麗なステップを踏む。
謙吾は苦戦し、恭介もまた、クドのスピードに追いつかない。
一方の理樹は奮戦、鈴とデッドヒートを繰り広げ、追いつけ追い越せの死闘。

しかし、いざゴールへクドが飛び込もうという時、突然に佳奈多が目の前に立ちはだかった。
「あなたたち! 危険行為は止めなさい……きゃああっ!!」
足元がお留守だったのがいけなかった、佳奈多はそのままビー玉を踏んづけ、もんどりうって転んでしまった。
後ろ様にひっくり返っていく佳奈多を目の前にした理樹は、見てしまった。

見て、しまった。

白い何かだ。スカートの中にあった。
きっと気のせいかもしれない。でも、気のせいじゃないかもしれない。
「み、見たわね、直枝理樹……」
つい昨日までの気さくな呼び名は消え失せ、フルネームを呼び捨てだ。
「みっ、見てないよ! 白いものなんて何も見えなかった!!」

それが墓穴だと知って風紀委員を飛び越え生徒会室まで連行されたのは、もはや悲劇の典型だった。

(了)


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