「あら、直枝じゃない? どうしたのよ?」
来ヶ谷さんから紹介されたんだよ。
きっと佳奈多さんなら知ってるって。
『好き』って気持ちが何なのか、まだ分からないんだ。
「──アンタ、そんなことで悩んでたの?」
うん、ごめんね。でも、知りたいんだ。
僕が誰かを好きになるっていうこと。
よかったら、教えて欲しいな。
「その前に、葉留佳にはもう聞いたの?」
うん、葉留佳さんに聞いたら、来ヶ谷さんを紹介されて、
そしてここに来たんだ。
「なるほど、ね。それじゃ、私の見解を話しましょう」
お願い、佳奈多さん。
「恋はね、独占したくなるものよ。例えば私なら、葉留佳と付き合ってる男がいて、その男を私も好きになったのだとしたら、
どんな手段を使ってでも私に振り向かせるわ──そう、どんな手段を使ってもね」
佳奈多さんの場合は、葉留佳さんと入れ替わったりするかもね。
二人ともよく似てるし……
「そうね、それが適当な判断だと思ったらそうするかもしれないわね」
独占、か。来ヶ谷さんも似たようなことを言ってたなあ。
恋っていうのは、そういうものなの?
「ええ、そんなもんよ。できるならその人と朝から晩まで過ごしたいくらいに、熱く燃えるものだわ。
激しくて、苦しくて、そしてその果てに『彼』を独占できたのなら、幸せになれる。
そういうもの、かしらね。ごめんなさい、口では上手く説明できなくて」
ありがとう、佳奈多さん。大丈夫、参考になったよ。
でも、葉留佳さんともまた違う意見なんだね。
「あの娘はなんて言ってたの?」
恋をすると心がキレイになる、って。
葉留佳さんらしいなって思ったよ。
「あのお騒がせからは想像もできない台詞だわ……まだ恋したことないんじゃないかしら?」
そ、それは失礼だよ。
葉留佳さんも女の子なんだから。
「まぁそれもそうね。葉留佳が男だと思ったらぞっとするわ……
私の意見でいいなら話したげるわよ。あ、そうそう、クドリャフカにも聞いてみたらいいわ。
あの娘、結構そういうことには敏感だし、何より可愛いわよね」
うん、分かった。ありがとう。
それじゃまたね。
「ええ、また。いい結論が出ることを期待してるわよ、直枝」
***
「っていうか、あの人と同じ思考回路だったなんて……なんてこと」
(続)