ねえ、小毬さん。
「ん? どうしたの理樹くん、改まって」
小毬さんは、誰かを好きになったことがある?
「うぁ!? ととととと突然どどどうしたの理樹くん!?」
うん。人を──女の子を好きになるっていう気持ちが、よく分からなくて。
「あぁーっ。それなら大丈夫、この小毬ちゃんにお任せあれなのです」
ありがとう。それで……
「そうだねえ。人を好きになるっていうのは……甘いんだよ」
甘い?
「そう。キャラメルみたいにぽわーんってなっちゃって、その人のことを考えると、思わず笑っちゃうの。
それで、照れたり、あわあわしちゃったり、好きな人の前では、何もできなくなっちゃうんだ」
へぇ……
「例えば──例えば、だよ!──私が理樹くんを好きになったとして、
そうなったら、私は理樹くんと会えなくなっちゃうかな」
え、そんな!
「だって、恥ずかしいんだもん。理樹くんの顔を見たり、理樹くんの仕草を見たり。
私も、あわあわしちゃってみっともないの、見られたくないし……」
そうなんだ。
人を好きになると、甘くなる……照れて、何もできなくなる。
「そうそう。でも、これは私の個人的な意見だから、他の人も聞いてみたらいいと思うよ。
そうだね、はるちゃんなんかいいんじゃないかな?」
分かった。ありがとう、小毬さん。
葉留佳さんにも聞いてみるよ。
「頑張ってね〜」
***
「うーん。理樹くんは恋してますねえ。鈴ちゃんだよね、きっと。
きっと、お似合いのカップルになるなあ。……私も、恋したいな」
(続)