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「にゃー」
「にゃんにゃん」
「にゃにゃっ」
「ふしゃっ」

 ネコとたわむれる女の子が、ひとり。ネコじゃらしを持って、ピョンピョンジャンプさせている。
 子ネコたちの、かわいいダンス。
「にゃーにゃー」
 ふりふり、ふりふり。ぴんとはったしっぽが地面をたたいて、まっくろ子ネコがとびあがった。
女の子はにっこり笑って、もうちょっとだけネコじゃらしを高くする。
「んー、にゃっ!」
 お次は、そのとなりにいたぶちネコ。
まっくろ子ネコよりちょっとだけちっちゃな体で、
一生けんめいぴょんぴょんして――つかまえた!
「えらい、えらい」
 まっくろ子ネコもぶちネコも、いっしょになでなでしてあげる。
 にゃーにゃ、にゃーにゃの大合唱。いっぴきずつ、順番だよ。
 ふりふり、ひょいひょい。ぴょんぴょん、しゅたっ。タンゴ? ワルツ? どれでもいいや。
「おいで。だっこしてあげる」
 女の子が両手を広げると、にゃんこがいっぱい飛びついてきた。
ふさふさ、もふもふの毛なみがくすぐったくて、女の子は笑った。
「きゃはは、ははははっ」
 寝転がって、にゃんこたちに囲まれちゃった女の子。あははと空を見上げて……
「ふあぁ……」
 おおきなあくび。でも、だれもいないし、いいかな?
 そこに、かさかさと草の音。新しいネコかなとそっちを見た女の子は、
「あれ、佳奈多さん……?」
 見慣れた顔に出会ってしまって固まった。
「な、直枝!?」
 ふにゃりと折れたネコじゃらしに、たくさんのネコたちがにゃーにゃーじゃれあって、

ちょっとしたお祭り。
「か、可愛いね」
 理樹があちこち、目をそらしてる。いつもなら、ぜったい見せない顔だもの。
 あわあわ、あせあせ、飛びあがって、顔をまっかっかにした。でも、考えなおしてまた座る。
「……よ」
「え?」
「ヒミツよ。私と直枝だけの。葉留佳にも言っちゃダメよ?」
 きっと、理樹ならだいじょうぶ。そんな気がした。
「うん、分かったよ、佳奈多さん」
 ニッコリと笑った理樹。いっしょに横になって、近くに生えていたネコじゃらしをぬきとった。
ふりふりと理樹がゆらしてみると、みんなすぐにとびかかっていく。
「あはは、楽しいね、これ」
 みんながみんな、楽しくジャンプ。
ふたりでそのままにゃんこと遊んでいると、あっというまに時間はすぎていった。
「もう、日が暮れちゃうね」

「そうね……帰りましょうか」
 オレンジ色の夕日がお互いの顔をまっ赤にしてる。
 理樹と佳奈多は、それぞれの部屋に帰ろうとした──そこで、白ネコが佳奈多の肩にひょいと乗っちゃった。
「気に入られたみたいだね」
「もう、寮内はペット禁止なのに……まぁ、今日だけよ?」
「にゃっ」
 バイバイと理樹に手をふって、おわかれ。
 でも、肩のにゃんこだけはずっとにゃーにゃー鳴いてて、おわかれはもうちょっと先みたい。

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