ブログ
「えへへ、エリオ君、こっちはどう?」
「うん、美味しいよ」
「ホント! 頑張った甲斐があったよ」

二人の年末休暇は、至極普通に過ぎて行った。
クリスマスというイベントの存在は知っていたけれど、今までその習慣が全く無かったものだから、
一緒に過ごしているだけ、という状態にある。
一応、それっぽい料理は作ってみたのだが。

「ねえ、今頃なのはさん達とかスバルさん達、何してるかなあ?」
「あー……どうだろう、なのはさん達は多分ヴィヴィオの言う通りだと思うけど、スバルさん達はパーティーかな?」

ヴィヴィオから、バカップルの話は愚痴半分に聞かされている。
傍から聞く分には面白そうだが、多分本人からすれば煉獄だろう。

「でも、私達もやってみる?」
「え、何を?」

キャロは舌平目のムニエルをナイフで切り、フォークで刺す。
それをエリオに持っていって、「あーん」と言った。

「あ、あーん……?」
「んもう、エリオ君、早くして。私だって恥ずかしいのに」
「ごっ、ごめん」

あむ、と食べるエリオ。
自分で食べるのに比べて、何割増、いや何倍増しで美味しくなった気がした。

「うん、美味しいね、キャロの料理」
「ありがとう! あ、私飲み物取ってくるね」

立ち上がって一歩歩き出した瞬間、キャロはエリオの裾を踏んづけてバランスを崩してしまった。
そのまま、エリオに向かって一直線、完全に押し倒す形になってもんどり打った。
手が前にいったせいで重心がずれ、胸の辺りを思い切りエリオの顔に押し付けてしまう。
何かが絡まってしまったのか、じたばたと動くだけで立ち上がれなかった。

「キャロ、どいて、苦しい、苦しい……!」
「うわわ、ごめんなさい、エリオ君!?」

ようやく人心地着けた時、エリオの顔は真っ赤だった。
気不味い沈黙が流れ、ついさっき何をしようとしていたのか、お互い完璧に忘れていた。

「ね、ねえ」
キャロが、ゆっくりと切り出す。
エリオは「何?」とガチガチに固まった声を出すと、じっとキャロの目を見つめた。

「私、今年のプレゼントは、エリオ君が欲しいな」
「えっ、それは、つまり、どういう……」

言葉を字面通りに受け取るべきか、それともその奥まで見通せばいいのか、
エリオは判断がついていないようだった。
キャロは服の胸元を開いて、エリオの耳元で囁いた。

「デザートは、わ・た・し♪」

タヌキ耳直伝、上目遣い攻撃。
一発KOを食らったエリオは、そのまま理性を失った。

一方、キャロは唇を奪われながらも、幸せの真っ只中にいた──計画通り。
ちなみに、この一件がルーテシアに知られて、泥沼の抗争が始まるのは、また後々のお話。

(了)

小説ページへ

inserted by FC2 system