「陛下、陛下」
「んん?」
目をこらそうとして初めて、自分がほとんど目を開けていた無かったことに気付く。
貼り付いてしまっているかのような目蓋をようやく開けると、先程まで感じていた光が直接目に入り、思わず顔をしかめるう。
「イクスー?」
聞き覚えのある声と、脳裏に浮かぶ姿に押されて再び眼を開いた。
「……スバル?」
「はい、スバルですよ。もう朝ですから、起きてください?」
 予想通りの、予想外の姿がそこにあって、驚くイクス。
「なんでここに……?」
「もう、イクス。まだ寝ぼけてるんですか? さては昨日も遅くまで研究していましたね?」
「研究? 戦争の?」
スバルが大げさにため息をつく。
「今日は一段と、おとぼけさんですね。そんなこと言ってると、今日のピクニック置いて行っちゃいますよ?」
「ピクニック?」
「そうですよ〜、今日は私とピクニックの予定じゃないですか」
まだ頭が寝ぼけているのだろうか、ゆっくり体を起こして周りを確認する。
自分の体には柔らかい布団が掛けられ、上からは天蓋からは豪華なレースが下がっている。
「夢?」
「夢じゃありませんってば」
カーテンを開けていたスバルが手を止めてイクスの元へやってくると、イクスの顔の前で手を握り込む。
「うりゃ」
避けようとする前に、スバルの中指がイクスの額に命中する。
「あいたっ」
「目が覚めましたか?」
「スバル、あなたのデコピンはだんだん手加減が無くなっている気がします」
そんなに表情を変えることのないイクスが、拗ねた顔を見せる。
「それはきっと段々イクスの額が硬くなっているせいですよ」
「そうでしょうか」
一層頬を膨らませてみせるイクス。
「さっ、目が覚めたらさっさと顔を洗ってください。お水はくんでありますから」
「わかりました」
そう言ってベッドから降りると、スバルの足下から頭まで眺めるイクス。
「それにしても……随分いつもと違う装いですね」
「こ、これは、一応お出かけだから、ってティアが無理矢理」
イクスの言葉に顔を赤くして焦るスバル。スバルは空色のドレスを身につけ、その上頭にコサージュまでつけていた。
「スバルー?」
扉を開けて部屋にティアナが入ってくる。
「準備は済んだ? ってあんた、陛下まだ寝間着じゃない!」
「すいません、ティアナ」
顔を洗いかけていたイクス頭を下げて謝る。
「え、陛下、そうじゃなくて! 私はスバルに!」
「いえ、着替えていないのは私ですから」
そういってすまなさそうな顔をするイクス。
「あーもー! スバル!」
変な葛藤におもわず叫んでしまうティアナ。
「大丈夫ですか? なにかお手伝いすることがあれば……」
扉からルネッサが心配そうに顔を出す。
「あ、ルネ! 良いところに! 隣から陛下の今日の着替え持ってきて!」
「は、はい! すぐに!」



企画ページへ

inserted by FC2 system